hatena匿名ダイアリー「医者として働き始めて不思議なこと」の感想など

投稿者: | 2017年5月23日

http://anond.hatelabo.jp/20170507185312
そろそろ旬を過ぎたので書いてみる。もしも筆者がこのブログを見つけてくれたら少し嬉しい。
 まず思ったのは、同じ学年でも見えてる世界って、世代ごとに違うんだな〜っていうこと。

自分が経験した科が内科だからかもしれないが毎日パソコンを弄っているだけで患者が治っていくのである

 私はヤブで頭も悪かったので少しもそんなことを思わなかった。そもそも電子カルテ端末なんてなかった。電子カルテ端末がないって相当な大昔だと思うかもしれないが、たかだか数年前のことである。オーダリング端末 + 紙カルテという組み合わせは当時は割とメジャーだった。だから、今の研修医にとって、電子カルテ端末が存在するのは当たり前の環境だ、っていうのが何となく新鮮だった。

 そして君の書いてある内容は、多分正しい。でも、今から言うことを少しだけ心にとめておいてほしい。これから君はどんどん業界に馴染んで、常識を失っていく。そして、勤務年数が上がると、色々な経験をして、それまで見えなかったことも見えるようになってくる。そして、かつての自分の想像力の範囲が狭かったように感じ始める。君はこの業界がどうなっているのか考え、悩み、行動し、いろいろな発見をして、少しずつ考えが固まっていく。そんな様子が、私にはなんとなく想像できる。それは本人にとって「進歩」のように感じられる。

 でも、本当にそれは進歩なのだろうか?

 私が初期研修した時も、医療には変だと思えるところはたくさんあった。そしてそれは今でもあまり変わっていない。でも、だんだんと周囲の景色が見えてくると、どうして医療がそういう奇妙な仕組みになっているのか、少しずつ納得できる理由を見つけられるようになって、不思議であると感じるべきところが、当然に見えはじめ、どんどん当たり前に感じられるようになる。慣れてしまうのである。本人は、昔よりも物事がよく見通せるようになったと自負しているけれども、必ずしもそうとは限らないと思う。

 部外者の方が、案外正しい目で物事を観察しているものだと思う。

 だから一読して「本当はね、もっと深いメカニズムがあって、実際にはこうなってるんだと私は思う」と言いたい気持ちになった。
 なったけれども、あえて言わないことにする。というのは、自分が研修の時におかしいと思ったことは、今でもおかしかったと思っているからだ。だから、何となく自分の方が正しいと思っていることも、優秀に違いない新人研修医の意見を前にすると、本当は若者の意見の方が実は正しいんじゃないかという気がして、今ひとつ自分の意見に自信が持てなくなる。見栄っ張りで、馬鹿を晒したくない気持ちが強いのである。

「どうして医療の世界がこんな不思議なことになっているのか、一つ一つ理由を見つけてみたいのです。」
「だが、それがわかるようになった頃には君は手遅れになっているかもしれないぞ。」
研修の時に飲み会で、ある先輩と交わした言葉だが、数年経った今ではその言葉の意味が少しだけわかる気がする。

だから今君が感じている違和感はものすごく貴重とだけは言っておく。

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